医学で「愛着障害」にあたるのは、主に2つの状態です。アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5-TRでの名前は、「反応性アタッチメント症」と「脱抑制型対人交流症」です。ひとつ前の版の日本語訳では、「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」「脱抑制型対人交流障害」とされていました(American Psychiatric Association, 2022)。
どちらも、深刻なネグレクトや、育ててくれる大人が何度も替わる環境など、きわめて不十分な養育のなかで育った子どもに見られるものです。反応性アタッチメント症の子どもは、つらいときにも大人に慰めをほとんど求めず、なだめられてもあまり反応しません。脱抑制型対人交流症ではその逆で、初対面の大人にもためらわずに近づき、ついて行こうとします(Zeanah & Gleason, 2015)。
世界保健機関の国際疾病分類ICD-11でも、反応性アタッチメント症を診断できるのは子どもだけで、特徴が生後5年以内に現れることが条件です。1歳未満、または発達年齢が9か月未満では診断しません(World Health Organization, 2024)。つまり医学の言葉としての愛着障害は、乳幼児期の深刻な養育の問題と結びついた、子どもの診断です。